Limousin Périgord / リムーザン・ペリゴール

Limousin Périgord / リムーザン・ペリゴール

Limousinは古くはリムーザン子爵領として、そして現在ではリムーザン地域圏として独立した地域圏でありますが、Périgordペリゴールは旧ペリゴール州、それ以前のペリゴール伯爵領に従う歴史的な地名であり、現在ではAquitaineアキテーヌ地域圏に属しているDordogneドルドーニュ県として存在しています。現在はこのように全く違う地域圏に属していますが、中世においては同じ様にlangue d’ocオック語の方言であるリムーザン語を話す地域でした。ちなみにここ以南では同じオック語でも違った方言のラングドック語、南西部ではガスコーニュ語が話されていました。また、地理的にも植生域がかぶるものも多く、支配体制は違う歴史をたどってきたにも関わらず、文化の根本に関わる言語という共通点も持っているために、その他の文化的側面にも多くの共通点を持っています。それは食文化、『地方菓子』についても然りです。一方、Périgordはその属するAquitaineとの共通点がほとんどないのが実情です。ですので、ここでは地域圏という枠組みから離れて、歴史的、文化的な側面を重視した区分けを取りたいと思います。地域圏ごとの区分けというこのHPでの原則からは外れてしまい、他のものと比べて分かり辛くなってしまうかもしれませんが、PérigordをAquitaineに区分けしても「面白くない」のです。それよりは歴史的な側面も合わせて共通点を見いだせるLimousinと合わせたほうが「面白い」と思います。

 Périgordは下の地図の様に得てして四つの地域に分けて語られることが多いです。北のPérigord Vert(緑ペリゴール)、中央のPérigord Blanc(白ペリゴール)、南東のPérigord Noir(黒ペリゴール)、そして南西のPérigord Pourpre(真紅ペリゴール)です。Vertはchêneオークやchâtaignier栗の木などが豊富な自然公園を含んでおり、また牧草地も大きいためにこのように呼ばれます。Blancはその石灰質の地質からそのように呼ばれ、この地域の穀物地帯として有名です。Noirはchêneオーク林が遠くから見ると黒く見える事から来て言います。Pourpreは他のものに比べて新しい呼称で、近年のエコ・ツーリズムの関係から、この地域の特産であるvin(Bergerac A.O.C.など)を想起させてる色としてこの名称が採用されています。Périgordではその石灰質の土壌、chêneやnoisetteハシバミの木といった生息条件からTruffe du Périgordとして高品質で高価な黒トリュフを産します。また、Périgord東部で採れるnoixクルミは良質で知られ、A.O.C.(原産地呼称統制)にも指定されています。地質の関係でTruffeは採れませんが、Périgordと似通った植生はLimousinにも見られ、それは『地方菓子』に反映されています。また、Limogeリモージュはフランスで最も有名な量産磁器の産地で、PérigordはFoie Grasフォア・グラの産地です。


  • ChâtaignesChâtaignes / シャテーニュ

 名前の通り、見た目の通り、châtaigne栗の菓子です。châtaigneとmarronの違いについてはPrivasのページを参照して下さい。このようにpâteペースト状のものをchocolatで栗のようにデコレーションした姿で売られている事が多かったです。このように丸ごとではなく、加工品として用いいられていることから、この地域では、この地域圏の『地方菓子』のページの冒頭でも書いたようにchâtaignierが多いのですが、その中でもmarronではなくchâtaigneが多く取れるのではないか、と思われます。




  • La Galette CorrézienneLa Galette Corrézienne / ラ・ガレット・コレジエンヌ

 その名の通り、Corrèzeコレーズ県のガレットです。CorrèzeはLimousinの南、ちょうどPérigordとの境界にあります。そのためか、この菓子はChâtaigne栗とnoixクルミの両方を使っています。fonçage敷いたpâte sucréeサブレ生地の上にpâte de marronマロン・ペーストを敷き、その上に生のnoixを並べてその上からgénoiseスポンジケーキのような生地を流して焼き上げます。とても素朴ですが『地方菓子』の特徴をよく表しています。




  • Le CreusoisLe Creusois / ル・クルーゾワ

 上と同じようにCreuseクルズー県の名産品です。これはこの地の植生の特徴の一つであるNoisetteハシバミを使ったものです。この組成は面白く、食感的にはgénoiseスポンジケーキのようですが、blanc d’œuf卵白しか使っていなく、noisette en poudreハシバミのパウダーを使ったbiscuitビスキュイです。これはdacquoiseダクワーズのような構成で、それでいてdacquoiseっぽくないのですが、大量のbeurreバターを使っているためです。とてもいいnoisetteの香りがします。




  • Cerneaux de NoixCerneaux de Noix / セルノー・ドゥ・ノワ

 直訳すると「クルミの半身」といったところです。noixは固い殻(核果)を割った中に写真のような種子(仁)の部分が二つくっついて入っていますが、これを写真のように単体にしたもののことを(一般的に食材としての目にするクルミのことを)cerneaux de noixと言います。これはそのままの名前を用いた菓子です。これはLimousin南部からPérigord各地の至る所で見られる『地方菓子』の一つです。これはgrillé焼く場合とそうでない場合があり、店によってまちまちですが、それらをcaraméliséキャラメル掛けしたものに光沢をつけています。これはpralinéプラリネの要領と同じです。




  • Les ArlequinesLes Arlequines / レ・ザルルキーヌ

 arlequinとは「道化師」を意味し、これはイタリアの喜劇「Commedia dell’atre」に登場する道化師Arlecchinoアレルッキーノから来ていると思われます。そしてこの道化師が「菱形模様」の衣装に身を包んでおり、これから派生してarlequinは「菱形模様」のことも意味します。これはnoixクルミをchocolatとgiandujaジャンドゥージャを合わせたものでenrober包み、それのまわりにsucre glace粉糖をつけたものです。ちなみにこれは女性形でarlequineとなっていますが、これはnoixが女性名詞であるためだと思います。