Lorraine / ロレーヌ

Lorraine / ロレーヌ

Lorraineロレーヌという呼称は、中世初期からこの地がLotharingiaロタリンギア(フランク王国分裂後のロタールに分割された「ロタールの地」の意味)と呼ばれていたことに由来します。フランク王国分裂後、最終的にヨーロッパは西フランク王国と東フランク王国に分かれ、それぞれフランス(フランス王国)とドイツ(神聖ローマ帝国)になりました。現在ではフランスに属しているLorraineですが、当初から長い間神聖ローマ帝国の一部のLothringenロートリンゲン公国として存在していました。Alsaceアルザス地域圏もこの公国に含まれていました。ですので、両地域圏には似通った文化(それはまたドイツ的な文化)が色濃く残されているのです。近世に入るとLorreineはロレーヌ公国として、有名なStanisras Leszczynskiスタニスラス・レシチニスキ(一代公として)がフランス王国から拝爵するという形をとり、彼の死後は名実共にフランス王国に併合されました。その後も普仏戦争、二度の大戦の中でフランスとドイツの間を行き来し、最終的に今の状態に落ち着いたのは第二次大戦の終わりになってからです。このように、現在ではフランスの一地域圏として確立していますが、この地域圏(上に書いたようにAlsaceにも同じ事が言えます)には中世初期から近代までという長い時間にわたってドイツ文化圏に位置しており、町並みや言葉といったものに限らず食文化においてもその影響が顕著です。また、Lorraineは南東のFranche-Comtéフランシュ・コンテ地域圏とAlsaceアルザス地域圏の圏境にMassif des Vosgesヴォージュ山脈を持っており、そこにまた平野部と山間部による文化の差異が見られる等、ヴァラエティに富んだ地域圏であります。また、食文化に限って言えば、前述のスタニスラス・レシチニスキ公の功績も大きいです(個々の事象については後述しますが、例えば彼のお抱えの菓子職人だったがParisに現在でもその名を残すStorerストレーであった)。


  • Quiche LorraineQuiche Lorraine / キッシュ・ロレーヌ

 おそらく最も有名なspécialitéであり、最も有名な「quicheキッシュ」だと思います。salé塩味ですが、どの菓子屋にでもあります。quicheといえばœuf卵とcrème生クリームを合わせたappareilアパレイユをpâte à briséeブリゼ生地をfonçage敷いた型にながして焼くもので、具材には様々なものがあります。しかし、「〜Lorraine」といったら必ずlardonベーコンを小さく切ったものをいれます。






  • Pâté LorrainPâté Lorrain / パテ・ロラン

 これもこの地域圏で頻繁に「菓子屋」で見られるものです。見た目の通り、その名の通り、塩味のものです。これはほぼ全てと言っていいくらい菓子屋で売っています。Alsaceアルザス地域圏の「Tarte Flambée」や、Bourgogneブルゴーニュ地域圏の「Gougère」と同じ位置づけになるでしょう。これはもともとはこの地方のBaccaratバカラの町のspécialitéと言われています。豚肉と子牛肉をherbeハーブとvinワインでmarinerマリネした後、pâte feuilletéeパイ生地で包み、上に葉っぱの模様をつけたpâte feuilletéeをのせて焼き上げます。




  • DuchesseDuchesse / ドゥシェス

 この菓子はMetzメスとNancyナンシーで見られたものです。他の町では見られませんでしたが、このようなganacheガナッシュをmeringueメレンゲでenrober包んだ菓子はCentreサントル地域圏やBourgogneブルゴーニュ地域圏のNeversヌヴェールでもみられます。ちなみにこの両者はla Loireロワール川流域という共通点があります。このduchesseという名は元ポーランド王にしてロレーヌ公となったStanislas Leszczynskiスタニスラス・レシチニスキの娘でフランス王LouisⅩⅤルイ十五世のreine妃となったMarie Leszczynskaマリー・レクザンスカに由来するという説があります。しかしこれは誤りで、彼女はreine王妃であって、duchesse公爵夫人・女公ではありません。これがレシチニスキ公の妃Catherine Opalinskaカタリーナ・オパリンスカに由来するというならば正解ですが、こちらはそれほど有名ではないので、名付け元とはならないでしょう。他で見られるものとこちらとの違いというと、緑に着色されたmeringueを使っている点と、中にいれるものがpralinéプラリネの割合が多くモソッとしている点があげられます。


  • Pain d’AnisPain d’Anis / パン・ダニ

 元々は風光明媚で知られるVosgneヴォージュ県の町Gérardmerジェラールメのspécialitéでしたが、現在では各地で見られます。Bretagneブルターニュ地域圏のSaint Maloサン・マロなどにもこの名前の菓子がありますが、そちらはカリカリのmacaronマカロンのような見た目です。こちらはfarine小麦粉、œuf卵、sucre glace粉糖、anis茴香を練り合わせたものを薄くのばし、さらに凹凸の模様のついたrouleau綿棒で跡をつけた後切り分けてから低温で色がつかないように乾燥焼きします。




  • KougelhopfKougelhopf / クグロフ

 この地域はこの地域圏の冒頭でも書いたように、Alsaceアルザス地域圏と似通った文化をもち、それはそのままドイツ的であると言えます。ですので、このような菓子が度々見られるのです。他にもPretzelプレッツェルやLinzer Torteリンツァー・トルテも見られました。これらの菓子については詳しくはAlsaceアルザス地域圏のページを参照して下さい。






  • Cake Claude Gellée dit «le Lorrain»Cake Claude Gellée dit «le Lorrain» / ケーク・クロード・ジュレ・ディ・ル・ロラン

 この菓子の名は、Lorraineロレーヌ地域圏出身のフランス古典主義絵画の画家で、風景画の巨匠としてしられるClaude LorrainことClaude Gelléeに由来しています。そしてこの菓子はこの地域圏でも彼の出生地であるChamagneシャマーニュのあるVosgesヴォージュ県の『地方菓子』になります。これはamandeアーモンドを使ったnatureとchocolatの二種類のbiscuitビスキュイを外側にnature、内側にchocolatがくるように流して焼いたものです。構成は同じでも各店で趣向を凝らしたものが作られています。




  • Les Charbonnettes des VosgesLes Charbonnettes des Vosges /   レ・シャルボネット・ド・ヴォージュ

 これは「ヴォージュの木炭」といった意味合いで、この地域圏の南東に位置するMassif des Vosgesヴォージュ山脈における林業に由来する菓子です。ですので、この菓子が見られる地域はVosgesヴォージュ県のみになります。この菓子は細かく砕いたnougatineヌガティーヌを入れたpraliné aux amandesアーモンドのプラリネを、chocolat blancホワイト・チョコレートでenrober包み、truffeトリュフの要領でcacao en poudreカカオ・パウダーの上で転がして独特の形を作ります。






  • La VosgienneLa Vosgienne / ラ・ヴォージエンヌ

 このbonbon飴も主にVosgesヴォージュ県で見られるものですが、工業製品は全土でみられますし、スーパーでも買う事が出来ます。その特徴としてはsève de pin松の樹液を使っている点です。工業製品にはそのessennceエッセンスだけが添加されいます。また形も松を模した形をしており、pinの多いMassif des Vosgesならではのspécialitéだと思います。