ノール・パ・ド・カレーの地方菓子

                                                    Gaufre / ゴーフル

 この地域圏で最も有名なspécialitéです。とはいっても日本ではもっと厚い生地の「Gaufre Belge」が有名で、そちらはフランス国内に限らず世界中でいわゆる「(ベルギー)ワッフル」として通っています。こちらでは「Gaufre Fourréeゴーフル・フーレ」の名前で、生地は薄く小判型で、間にはcassonadeカソナード(赤砂糖)とbeurreバターを合わせたシンプルなものがfourré(詰められる)されたものが一般的です。


   Bêtise de Cambrai / ベティーズ・ドゥ・カンブレ



基本的にはCambraiカンブレの町のspécialitéですが、この地域全体で広く売られているのでこちらに記しました。bêtiseとは「へま、ばかなこと」の意味で、これはその成り立ちからきたものです。今でもその製造元として広く知られている「Afchain」という店のapprentiアプロンティ(見習い徒弟)が普通の飴を作っている途中で失敗し、しかしそれを振る舞ったところ、思いのほか受けが良かったため、そのまま売り出した、というもので す。もともとはmentheミント味のみでしたが、現在ではいろいろな味のものがあります。どのようなbêtiseだったのかというと、おそらく飴を引きすぎて(冷やしながら空気を含ませることにより光の屈折の関係できらきらと光る)真っ白に糖化してまったのではないかと思います。また、非常にglucose水飴が多いrecetteレシピなので、その保湿性からカリッではなくモロモロとネチッとする食感になっています。そして最後に全く引いていない透明な(多くの場合色づけされています)飴を一本あわせて、それらを細長く伸ばしてカットします。


    Palet de Dame / パレ・ドゥ・ダム

これも広くこの地域圏で見られる菓子です。これと言って特別なことはないのですが、とにかくこの地域圏のお店にはほとんどの割合でGaufreと同じくらい全面的に置かれています。これは丸く薄く伸ばしたsabléサブレを焼き、そのうえにfondant au citronフォンダン(ある程度の濃度のsiropシロップを攪拌して空気を含ませながら冷やしたもので、暖かみのある甘さをだすことができる)オー・シトロン(レモン風味)を塗ります。


       Cramique / クラミック

基本的にはBriocheブリオッシュですが、生地としては油分が若干少なく(色みからjaune d’œuf卵黄が少ないと思います)、その風味から中に含ませる水分のほとんどはlait牛乳によるものと思われます。また、中にraisin sec干しぶどうが入ることが多いです。そして、ほんとんどの場合、このようにmoule de cakeケーク型で焼き上げます。一部の町では「Pain Gâteau Raisinパン・ガトー・レザン」の名前で売られていました。


      Faluche / ファリューシュ

この地域圏で広くみられる油脂分を含んだpainパンです。真っ白で味としては特に癖のない風味です。形は主に楕円形をしており、よく本では「しぼんだラグビーボール」のように書いてありました。上にchocolatチョコレートのチップがのっていることがあります。


  Tarte au Maroilles / タルト・オ・マロワール

主に東部からBelgiqueベルギーにかけての地域でみられる菓子です。これはA.O.C.にも指定されているfromageチーズのMaroillesマロワールを使ったもので、発酵生地にこのチーズをのせ、上からjaune d’œuf卵黄とcrème fraîche生クリームを合わせたappareilをかけて焼いたものです。これといって甘い菓子であるわけではありません。


   Tarte au Sucre / タルト・オ・シュクル

 この菓子にはvergeoiseヴェルジョワーズというbetterave sucrièreサトウダイコン(甜菜)から作られる砂糖を用います。この甜菜の生産量でフランスは世界一であり、その主要な生産地がこの地域圏になります。ですので、見た目と名前はなんてことはないものですが、これぞまさに『地方菓子』だといえるものです。ちなにみよく似た物でcassonadeカソナードというものがありますが、こちらはcanne à sucreサトウキビから取れる含蜜糖の一種で赤砂糖と呼ばれるものです。

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